『更生保護施設』と『更生施設』
どうやら時折、「更生保護施設」と「更生施設」の違いとは何だろう、と気になる方が、当施設のホームページを訪れてくれているようです。まったく別の施設ですが、非常に似た名前で、正直紛らわしいですよね……。
わたしたち「更生保護施設 横浜力行舎」は、同一敷地内に「更生施設 甲突寮」を併設し、同一の職員によって、一体的な運営を行っています(詳しくはこちらのページをご覧ください)。つまり、いまこのノートを書いているわたし自身も、「更生保護施設」の職員でもあり、「更生施設」の職員でもあるわけです。そんなわたしたちから見た、それぞれの施設の違いについて、今回は考えてみたいと思います。
1.更生保護施設とは
更生保護施設とは、更生保護事業法に基づいて運営される施設で、所管は法務省です。刑務所を出所した人や起訴猶予処分になった人などを受け入れ、宿泊場所や食事を提供し、就労や福祉サービスの利用といった自立に向けた支援を行っています。つまり、ざっくりと言うならば、何らかの犯罪行為を行った人を受け入れ、自立に向けた支援を行う施設、ということになります。入所にあたっては、保護観察所からの委託が必要です。
どのような人を受け入れているのか、というのは、施設によって様々です。わたしたち横浜力行舎では、特に「特別処遇対象者」と呼ばれる、高齢や障がいを持つなどして福祉的な支援の必要性が高い人を積極的に受け入れ、支援を行っています。一方で、施設によっては「薬物事犯者を積極的受け入れる」という施設もあれば、「性犯罪事犯者を積極的受け入れる」という施設や「少年を中心に受け入れる」といった施設もあります。更生保護施設によってさまざまな特色があり、それぞれの強みを生かして日々支援にあたっています。
更生保護施設の在所可能期間は、原則的には6カ月とされています。ただし、保護観察期間(仮釈放の場合は満期に相当)が6カ月よりも長い場合は、保護観察期間が終了するまで制度上は在所が可能です(実務上は、6カ月を超えて年単位で在所することはほとんどないと思います)。これは、更生保護法によって、更生緊急保護によって更生保護施設で生活できる期間が6カ月と定められていることによります。たとえば、刑務所を仮釈放で出所して更生保護施設に入所し、満期まで残り2カ月の場合は、2カ月間保護観察がつくことになります。しかし、たった2カ月で自立に向けた準備を済ませることは容易ではありません。そういった場合でも、保護観察期間終了後に更生緊急保護の申し出を行うことで、身体拘束を解かれてから6カ月間(この例でいうと刑務所を仮釈放で出所してから6カ月間・保護観察期間終了後からみて4カ月間)は、引き続き更生保護施設で生活することが可能、ということになります。なお、高齢や障がいを持つ人といった特別処遇対象者については、さらに6カ月間更生緊急保護を延長することができるため、最大で12カ月間在所することも場合によっては可能です。
更生保護施設では、宿泊場所や食事の提供を行うことはできますが、医療などを提供することはできません。医療が必要な場合には、自費で受診するか、無料低額診療や生活保護の医療単給といった、なんらかのサービスを利用する必要があります(詳しくはこちら)。ちなみに食事についても、更生保護施設在所中はずっと金銭負担なしで食事が提供されるのかというと、必ずしもそうではありません。原則的には、入所から2カ月程度は、保護観察所から食事付き宿泊費の委託を受けることにより、ご本人の金銭負担なく更生保護施設から食事を提供することができますが、その後は宿泊費のみの委託となることにより、有償での食事提供かまたは自身にて外部で調達ということになってしまいます(高齢や障がいを持つ人など、働くことが難しい事情のある場合などにはこの限りではありません)。更生保護施設からご本人へ支給できるお金などもありませんので、住む場所や(一定期間の)食事には困らないけれども、収入がなければ自由にお金を使うことはできないため、基本的には、就労自立が想定されていることの多い施設、ということになります。実際、就労自立が難しそうなケースについては、受入を行うことが難しい、という施設も少なくはないようです。
2.更生施設とは
更生施設とは、生活保護法に基づいて運営されている施設で、所管は厚生労働省です。生活保護法においては、「身体上又は精神上の理由により養護及び生活指導を必要とする要保護者を入所させて、生活扶助を行うことを目的とする施設」とされています。実際には、生活保護を受給しており、何らかの精神疾患を持っていたり、アルコール依存症やギャンブル依存症といったアディクションがあったり、または高齢であったりするなかで、社会生活や単身生活を送ることに難しさのある人たちが入所し、自立に向けた支援を行っています。なかには、そうした生きづらさを抱えるなかで犯罪行為を行い、わたしたちの施設へ入所の依頼が来ることもあります。入所にあたっては、福祉事務所(生活保護の実施機関)からの措置が必要です。
入所の経緯としては、福祉事務所からの相談や、病院からの相談からはじまることが多数です。単身生活を送っていたが、金銭管理がうまくいかずに生活が破綻してしまったり、依存症などの病状をコントロールできず入院となり、また単身生活に戻ることには不安があったりする場合などに、入所の相談が来ることがあります。ここ最近では、比較的年齢の若い人(20代など)で、仕事がなかなか長続きせず、生活を立て直すために入所に至るケースも増えてきたように思います。更生施設と同じように生活保護法で定められた保護施設として、ほかに救護施設というものがあります。救護施設については「著しい障害があるために日常生活を営むことが困難な要保護者」を対象とするとされているように、一般的に救護施設は、より病状が重かったりADLが低下していたりなどの理由により、日常生活を送るのが困難な人を対象としているとされます。更生施設においても救護施設においても、入所者の自立を目指して支援が行われているのは同じですが、更生施設はADLは自立しているなど日常生活には問題ない人を対象としているのに対し、救護施設はADLが低下してきていたり病状が重いなど日常生活に支障のある人を対象としている、といってもいいかもしれません。
とはいえ、そうした更生施設と救護施設の垣根は、少しずつなくなってきていると感じるのも正直なところです。たとえば、わたしたちは更生施設ですが、軽度認知機能障害がありややADLの低下してきた方や、重い精神疾患をお持ちで3カ月程度で入退院を繰り返す方などをお受けすることもあります。また、救護施設を何らかの事情(窃盗行為や飲酒などが多いです)で退所せざるを得なくなった方を、わたしたちの更生施設でお受けすることもあります。救護施設に比べ、看護師の設置基準なども違うため、同程度の医療的ケアなどを提供することは難しいのが現実ですが、更生施設においても、より厚い医療的な支援や、福祉的な支援が求められているといえます。
更生施設には、在所可能期間といったものはありません。その方にあった支援を提案し、相談しながら自立を目指していくことになります。実際には、1~3年程度で自立に至ることが多いですが、場合によってはそれより短期の方もいらっしゃいますし、5年以上かけて自立を目指す方もいらっしゃいます。
更生施設は生活保護法に基づく施設ですので、入所者の方は生活保護を受給しています。福祉事務所からご本人へ支給される生活保護費(生活扶助)をもとに、食事は3食施設から提供されるほか、生活に必要な日用品の支給などもすべて施設から行っています。医療については、生活保護の医療扶助によって、ご本人の負担なく医療を受けることができます。ほか、日用品費等の名目によって娯楽等に用いることのできるお金も毎月支給しているため、就労などによる収入がなくても、ある程度は自由にお金を使うことができます。夏祭りやクリスマス会といった季節に応じた行事にも力を入れており、まさに、「健康で文化的な最低限度(以上)の生活」を達成するための施設であるといえます。
ほか、更生施設には施設内作業を行う作業棟が設置されています。ここで作業を行い、就労に向けた訓練を行いながら、一定程度の工賃を得ることもできます。
3.なぜ一体的な運営が必要なのか
ここまで説明してきたように、更生保護施設と更生施設は、似たような名前であるにも関わらず、まったく性格の異なる施設です。それでは、なぜわたしたちは、この異なる2つの施設を一体的に運営しているのでしょうか? その理由は大きく以下の2つに分けられます。
①更生保護施設において、福祉的支援の必要な人を受け入れしやすくなる
前述のように、更生保護施設には6カ月間(延長しても最大12か月間)という在所可能期間の縛りがあり、その間就労等で収入がなければ、自由に使えるお金はありません。たとえば、障がいサービスや高齢福祉サービスに繋げたい(ご本人が希望している)場合でも、期間内の調整がかなわなければ退所してもらうほかなくなってしまいますし、仮に6カ月程度での調整が可能と考えられる場合でも、収入も貯蓄も一切なければ、6カ月間一切娯楽品を購入できないということになってしまいます。そうした中では支援の見通しが立てづらく、そういった福祉支援が必要な人を易々とは受け入れできなくなってしまうかもしれません。
しかし、更生施設を併設することで、こうした懸念を払拭することができます。たとえば、更生保護施設の在所可能期間内にサービス調整が難しいと考えられる場合には、どこかのタイミングで更生施設へ入所(移管)することで、更生保護施設の在所可能期間に縛られることなく、ご本人が希望する支援を展開することができます。また、更生施設への移管を行うことで、ご本人へ生活保護費の一部を支給することが可能になり、自由に使っていただけるお金を確保することができます。現実的には、福祉サービスへの調整を6か月間や12カ月間で進めていくことは、必ずしも容易ではありません。そもそも、十分にアセスメントを行えないまま急いで調整を進めていくことが、ご本人の利益に必ずしもなるとも考えられません。必要に応じて更生施設への移管を行うことで、ご本人が希望する支援を安心して受けていただくことができるよう努めています。
②更生施設において、触法ケースの受け入れをしやすくなる
福祉の世界では、罪を犯してしまった対象者のことを、よく触法ケースなどと呼びます(刑事司法の世界で用いられている触法とは意味合いが違います)。こういったケースは、どうしても福祉施設においては受け入れが慎重になりがちです。「うちの施設でも窃盗するんじゃないか」「粗暴性が高いから他利用者と喧嘩になるんじゃないか」「そもそも犯罪をした人にどう支援すればいいか分からない」「犯罪者と関わるなんて怖い」などがその理由でしょう。
そんななかで、わたしたちは更生保護施設を併設し、常日頃から刑余者等と関わっていることから支援のノウハウを持っており、またそういった方と関わることについて(当然ではありますが)なんら抵抗がありません。そのため、ほかの施設では受け入れが難しいような触法ケースでも、当施設であればお受けできる、という利点があります。結局のところ、ご本人が支援を受けることを希望したとしても、受け入れる機関や施設がなければ、支援を受けることはできません。わたしたちは、更生保護施設と更生施設を併設し、刑事司法と福祉の両方に携わることで、その両方の専門職として支援が必要な方のお力になれるよう、日々努めています。
もちろん、わたしたちがこうした支援を行えるのは、ひとえに更生保護官署や横浜市といった関係機関のみなさま方の深甚なるご理解とご協力の賜物にほかなりません。なかでも、支援の必要性にご理解くださり、生活保護を実施するにあたっての実施機関として支援にご協働くださっている磯子福祉のみなさまには、常に多大なるご厚情を賜り、衷心より感謝申し上げる次第です。皆様の力強いご差配なくして、現在の支援の完遂は到底能わぬものと存じます。今後も、関係機関のみなさま、そして社会のみなさまからより一層のご理解を賜れるよう、邁進してまいる所存です。今後とも、わたしたち「更生保護施設 横浜力行舎」と「更生施設 甲突寮」を、よろしくお願いいたします。

